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人生朝露

人生朝露

人為を嘆くヒト。

Zhuangzi
莊子曰「夫子固拙於用大矣。宋人有善為不龜手之藥者、世世以??絖為事。客聞之、請買其方百金。聚族而謀曰『我世世為??絖、不過數金。今一朝而鬻技百金、請與之。』客得之以??王。越有難?王使之將。冬、與越人水戰、大敗越人、裂地而封之。能不龜手一也、或以封、或不免於??絖、則所用之異也。今子有五石之瓠、何不慮以為大樽而浮於江湖、而憂其瓠落無所容?則夫子猶有蓬之心也夫。」(『荘子』逍遥遊 第一)
→荘子は言った。「あなたは大きなものの使い道がわかっていないですね。宋の国に代々、布を白く漂白するのを生業にしている人がおりましてね、その人は綿布を漂白する仕事の過程で、ひび割れによく効く妙薬を発明したんです。旅人はこの話を聞いてその薬の製法を百金で買おうと言い出しました。宋の人は一族を集めて話し合い、こう結論付けました。「綿を白くすることを仕事にしたって、その代金はたかが知れている。どうかこの薬の製法を買ってはくれまいか。」旅人は、呉王にこの製法を教え、呉王はこの旅人に大将の位まで与えました。冬に戦があり、あかぎれの心配なく戦えた呉の国は越の国を破り、旅人はさらに土地を与えられました。一方は布を白くする仕事のため、一方は利益と地位を得んがためですが、ひび割れを治すための知恵を使っていることは同じです。あなたは今、五石もあるひょうたんを、甕にも柄杓にも使えない無用の長物だと言いましたが、そのひょうたんを湖に浮かべて舟にでもして遊べば良いのです。空っぽのひょうたんも使いよう。あなたはひねた考えにとらわれていますね。」

【CBD-COP10】生物多様性条約会議 in 名古屋: 地球の「薬箱」を救え! WWFジャパンHPより

>「賢人」たちの言葉
>このシンポジウムには、人(ヒト)の「賢人」にゲストとしてお出でいただきました。
>いずれも、さまざまな野生植物を、地域に受け継がれてきた伝統的な利用方法で現在も利用している人々。人と植物、人と自然が共存する、その「知恵」をお持ちの方々です。
>事実、お招きした「賢人」は、ケニア、ブラジル、中国と、まったく違う地域からお越しいただいたにもかかわらず、そのお話の根底には、人と自然のかかわりを考える上で、確かに共通点と言えるものがありました。
>賢人たちが暮らしているのは、病院もなく、医者も看護師もいない地域。人々の健康を支えているのは、昔も今も自然の森から採れる、薬用植物だそうです。
>そして、父から子へ、村の長老から若者たちへと、どの植物にどんな薬効があり、どのような方法で採取すれば使い尽くすことなく末永く利用し続けられるのか、地域の人々はその知恵を受け継いできたといいます。

参照:WWFジャパンHP 生物多様性条約会議 in 名古屋: 地球の「薬箱」を救え! 
http://www.wwf.or.jp/activities/2010/10/911319.html

というわけで、人類史上最古級の環境思想家、
悪かったわね!
荘子であります。

参照:アバター(AVATAR)と荘子 その1。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5039

荘子と進化論 その56。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201007250000/

当然、今回もアメリカは批准しませんでした。
遺伝子組み換えの技術をほぼ独占しているモンサント社を抱えておりますので、当然です。ラウンドアップに遺伝子組み換え。いかにもアメリカらしいですね。これで反捕鯨には躍起になるんだから大したもんですわ。あるがままの自然のありようを人為でひん曲げる。なんのことはない。てめえが儲けたいだけなんですよ。人間ってのは。

参照:Wikipedia モンサント社
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%88_(%E4%BC%81%E6%A5%AD)

Zhuangzi
『中國有人焉、非陰非陽、處於天地之間、直且為人、將反於宗。自本觀之、生者、暗?物也。雖有壽夭、相去幾何?須臾之?也。奚足以為堯、桀之是非?果?有理,人倫雖難,所以相齒。』(『荘子』 知北遊 第二十三)
→この中国に人がいる。陰陽に偏らずその均衡の中で天地の間を生きている。いずれは万物の根源へと帰っていくが、ひとまずは人の形をしている。万物の根本からみれば、人の一生というのは、一瞬の間、気が集まっている状態にすぎない。大いなる自然の営みからみれば、人間が一喜一憂する長寿だとか夭逝だとかいう時間の差など、どれほどの価値があろうか?それはほんの刹那の出来事なのだ。その短い時間に、堯や桀を指して、彼は名君だとか、彼は暴君だなどと不毛な議論を繰り返している暇などあるのだろうか? 人間だけでなく、木の実も草の種にも自然の理は備わっている。人間の条理は複雑であるとはいえ、何らかの折り合いはつくものだ。

・・・荘子の場合、渾沌の話もそうですが、人為による干渉を批判する時に非常に抽象的な言葉を使うときがあります。大変短く、直感的なものです。したがって、乱反射しやすくもあるんですが、たとえば・・

Zhuangzi
『澤雉十歩一啄、百歩一飲、不?畜乎樊中。神雖王、不善也。』(『荘子』養生主 第三)
→沢のキジは十歩に一度エサをついばみ、百歩に一度水を飲む。そんなキジでも籠の中に閉じ込められる事を望まない。人間で言えば王様のようにエサや水にありつけても、心がそれを善しとしないからだ。

の後に、

『指窮於為薪、火傳也、不知其盡也。』(『荘子』養生主 第三)
→指で薪を推さなくとも、火は伝わり続け、その勢いはとどまるところを知らない。

・・と、いきなりあるんです。たった一文ぼそっとあります。この部分の解釈に関しては、いろんな本によってまちまちです。定まった理解があるわけでもないのに、鮮烈なイメージを残すんですよ。

自分にとっては、

YouTube 2001 a space odyssey
http://www.youtube.com/watch?v=ML1OZCHixR0
これとか、

01 Human as Virus
http://www.youtube.com/watch?v=XfLdCkP7j2w&feature=related
このイメージなんですよ。人為こそがこの世界の最悪のウィルスで、他の生物だけでなくそのシステムをも滅ぼし続ける存在であると。途中でわが身を滅ぼす時にだいたい気付くんでしょうが、その時にはもう遅い。

Zhuangzi
子獨不知至徳之世乎?(中略)當是時也,民結繩而用之,甘其食,美其服,樂其俗,安其居,鄰國相望,?狗之音相聞,民至老死而不相往來。若此之時,則至治已。今遂至使民延頸舉踵曰“某所有賢者”,贏糧而趣之,則?棄其親而外去其主之事,足跡接乎諸侯之境,車軌結乎千里之外,則是上好知之過也。上誠好知而無道,則天下大亂矣。何以知其然邪?夫弓、弩、畢、弋、機變之知多,則鳥亂於上矣;鉤餌、罔、罟??之知多,則魚亂於水矣;削格、羅落、?罘之知多,則獸亂於澤矣;知詐漸毒、頡滑堅白、解垢同異之變多,則俗惑於辯矣。故天下??大亂
→あなたは至徳の世について知っているだろうか?(中略)その当時は、民は文字の代わりに縄の結び目を使い、自分の手で作った食べ物を美味いと思い、自分の手で織った着物を立派だと思い、その土地の娯楽を楽しいものと思い、粗末であっても自分たちの住まいで十分だった。隣の国とは鶏や犬の聞こえるほど近かったが、人々は老いて死ぬまで往来をしなかった。このような時代にこそ、人々はのんびりとくらしていた。ところが今では、つま先で立ってせかせかと歩き回り、遠くに賢人がいると聞くと、教えを請いに遠くまで出かけていく。故郷の親を捨て、恩義のあった人たちも捨て、国をも越えて千里の外へ車で走り回るようになった。これは上の者が知を好んだための過ちである。上の者が、さかしらな知を好んで道を忘れてしまえば世の中は大いに乱れてしまう。どうしてそうなってしまうのか?そもそも人が弓、弩、鳥網、弋(いぐるみ)などの道具を使う知恵を身に付けると、それから逃れようと鳥は空で乱れ、釣針、えさ、網、四手網、梁(やな)のような道具を人が使いだすと、それから逃れようと魚は水で乱れることになる。人が檻、罠、ウサギ網などの道具を使いだすと、獣は沢で乱れることになる。

ま、人間社会においても「自称・正義の人ほど有害な人殺しはいない」というのは、世界の歴史書を読み返すまでもなく通用する視点でしょうが、善意だろうと、悪意だろうと、人間が自然と関わってきた歴史を見ても、ロクなことになっていないんですよね。

参照:荘子と進化論 その56。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201007250000/

Zhuangzi
故曰『無以人滅天、無以故滅命、無以得殉名。謹守而勿失、是謂反其真。』(『荘子』秋水 第十七)
→だから昔の人は言ったのだよ『人為によって天を滅ぼすな。故意に命を滅ぼすな。名利のために徳を失うな。』とね。この考えを慎み深く守ること。これが人間の本性に立ち戻るということだ。

仏教においても、老荘思想においても重要な言葉に「足るを知る」ってのがありますが、人間ってのは、やることなすこと、ほとんどこれが通用しちゃうんですよね。ロクなことに知恵を使わないし、使い出すとブレーキがきかない。欲望にきりがない。どん底まで見ないと目覚めない。地球のためには人類が滅びた方がいいと言われても、否定しきれないくらい浅はかなところがありますよ。ま、滅びるべくして滅びることは確信していますがね。

ただし、『荘子』という書物には、一つの救いがあると私は思っているんです。少なくともそれに共鳴している人たちがいると思っているんですよ。今でいうところの里山の知恵ですね。

参照:荘子の処世と、価値のない木。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5028

筑紫さんの命日はもうすぐです。

今日はこの辺で。


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